A9(Alice Nine)がクラウド・ファンディングで描き出す新しい絵図が日本の音楽シーンを覆す!?

所属事務所からの独立を経てまだ誰も見たことのない新たな地平へ

アリス九號.(アリスナイン)として2004年から始まり結成10周年を迎えた和洋折衷ヴィジュアル系バンドとしての歴史。2009年にはAlice Nineとの表記に改め、2014年の所属事務所からの独立を経て、「A9」として生まれ変わった彼らだが、その太い芯の通った音楽性は常に挑戦的で興味深い。

A9としての再始動のお目見えはすでにYouTube公式チャンネルで公開されている新曲『Phoenix』


ツインギターを駆使した太くて重いがスピード感もある轟音サウンドに、原点である和洋折衷味のスパイスをふりかけたメロディアス。仮面をかぶりつつも切なさを振り絞る(ショウ)のヴォーカルと派手なサウンドが、A9新世紀の幕開けにふさわしい艶やかさで魅了する。彼らのファンならずともロックファンならワクワクしてしまうこと間違いなしのエキサイティング・チューンだ。

と、そこまでは通常のバンドとしての活動。そこからがA9の問題提起を含めた新しい動き。実は8月リリース予定のEP盤(ミニアルバム)『銀河ノヲト』の制作資金は、今ちまたで流行の兆しを見せているクラウド・ファンディングの手法が取られるというのだ。

 

複数買いを促すのではなく、クラウド・ファンディングという新たな形での資金調達。その流れが日本の音楽シーンのあり方を根本から覆す!?

クラウド・ファンディングというのは、インターネットを通じて不特定多数の人々から資金を集める方法で、欧米ではすでに定着している資金調達方法。Kickstarter(キックスターター)を筆頭に、ベンチャー企業から政治運動、映画、音楽などのアート系のプロジェクトまで賛同した不特定多数の人々からお金を集めて、プロジェクトを実現する方法だ。すでに海外ではイギリスの人気プログレ・バンドのマリリオンが2001年から今に至るまでレコーディング費用をクラウド・ファンディングで賄っているという現実がある。

そしてそこで出資した人は何かしらのリターン(見返り)を得るわけだけれど、寄付として集めることもあり、必ずしも金銭的なリターンじゃないところが面白いところ。これは音楽シーンにとって実はものすごいことである。

通常はどんなミュージシャンやバンドもレコード会社や事務所などを通じて活動資金を得る。その見返りの多くは金銭的な見返り。つまり“売れる可能性があって利益が出る”ということを最優先事項として各社が提供する。無事に利益が出ればいいけれど、そうでない場合は”儲からない”と判断され、資金はストップ、活動停止を余儀なくされるのが現実だ。

ただこのシステムは同じ価格のCDなりの商品を売っていくのが基本。しかし音楽が多様化した昨今では同価格商品を多人数に売るという仕組みでは成り立たないのが現状。それにつれてのしてきたのが、いわゆる特典商法である。

たくさんの人数に売ることが難しくなったのなら、同じ人間に複数買いをしてもらえば良いという理屈である。握手券を付ける、ジャケットや収録曲、映像特典を変更して数種のタイプの違う商品を作り、同じ人間にたくさんのものを購入してもらう手法。もちろん違法ではないけれど、良い音楽を届けてなんぼという本来のミュージシャン/バンドの立ち位置とは少々ズレてきているのではないか。

 

音楽のあり方だけでなく、そもそもミュージシャン/バンドの音楽の制作にまでクラウド・ファンディングは影響していくはずだ

そこで登場するのがクラウド・ファンディングである。個人ひとりひとりがプロジェクトに賛同する気持ちを金額にして、直接ミュージシャン/バンドに届けることが、このシステムなら出来るのだ。そしてその場合、投資額はそれぞれ違った額を提供できる。そこに利潤を追求する会社は介在しない。従って”大衆に売れる”音楽よりも、”ファン(=投資者)に高い評価を受ける作品を作る”ことが優先される。

これは今までの日本の音楽シーンの価値観がひっくり返るほどすごいことである。大量に日本中にばら撒いて一般層に売れる音楽を作ることが今までの通例。そのために”一般ウケの良い”ポップな作品が良しとされてきたわけだが、その価値観は覆されてしまうのかもしれないのだ(もはやミリオンセラーの出ないシーンではすでに覆されているという考え方もある)。

今回A9が始めたのがそうしたクラウド・ファンディング「A9 FUND PROJECT」8月リリース予定のEP盤(ミニアルバム)『銀河ノヲト』の制作資金をこれによって集める。詳しくは以下のリンクを参照。

A9 FUND PROJECT
a9cloud
A9オフィシャルサイト
a9hp

同一作品の複数買いを良しとせず、良い音楽を届けるという原点に立ち戻ったA9の新しいチャレンジ。それによって多くの支持を受けて資金が集まれば集まるほど、彼らは大きく制作環境を充実させることが出来る。録音クオリティーを上げるために高級なレコーディング・スタジオが使えるかもしれないし、新しい機材や一流エンジニアを起用することも出来るかもしれない。いわばその命運は投資者であるファンそれぞれが握ることになる。

ちなみにこの「A9 FUND PROJECT」では賛同者=投資者はサポーターと呼ばれ、その出資額に応じて様々な特典が用意されているとのこと。特典はデータ送付が基本となるので、海外のファンでもタイムラグ無しに受け取れるものになるようだ。

また通常は資金調達プラットホームとなる会社(Kickstarterなど)を通じて数%の手数料がその会社に差し引かれるのが通例だけれど、この「A9 FUND PROJECT」は既存のチケット販売システムを使うことによって、そうした手数料を非常に安く抑えているのがさすが。つまり賛同者のお金のほとんどがA9のもとへ届くということである。

さて、A9がラフを描いているこの未来の日本の音楽シーンの絵図はいかがだろうか。彼らに賛同する人は、今までとは違う応援の仕方が出来るようになった。恐らくこれが成功すると、日本の音楽シーンの勢力図そのものが塗り替えられてしまうかもしれない。A9が先陣を切ることによって「A9 FUND PROJECT」以前/以降でシーンが紀元前/紀元後と同じくらい変化してしまうかもしれないのだ。

日本の音楽シーンは凪(なぎ)だというが、遠くの方に白波が立っている。その流れが加速するかどうかは、ファンひとりひとりの力にかかっている…。

(注:A9ファンドプロジェクト・サポーター募集期間は3/31をもって終了、近く結果報告が行われる模様だ)

A9(エーナイン)●プロフィール
Vo.将、Gt.ヒロト、Gt.虎、Ba.沙我、Dr.Naoからなる5人組バンド。2014年に結成10周年を迎え、同年、初のアジアツアー(全14公演)を成功させるなど、その活動は国内だけにとどまらず海外からの多くの注目も集めている。
2015年8月にはリリース、ライブツアーも予定している。

★iTunes Storeで過去の音源が入手できます

 

この記事の著者

編集長(夫)

「ゲッカヨ・オンライン~月刊歌謡曲●電子版」編集長。元・音楽雑誌「ゲッカヨ(旧・月刊歌謡曲)」編集長。現在はエンタメ〜商品レビュー、政治経済まで扱うライター業がメイン。「おためし新商品ナビ」編集も担当。

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